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ご挨拶
こころの健康に何らかの問題を抱える子どもたちの支援ニーズが,近年急速に高まっています。児童虐待やいじめ被害に巻き込まれた子どもやその家族は,深刻な悩みを抱えることになる場合が少なくありません。また,自閉スペクトラム(自閉症やアスペルガー症候群など),ADHD(注意欠如/多動性障害),LD(学習障害)に代表される発達障害は,社会全体の関心を集めています。これらの特性をもつ人たちは,幼児期から社会参加のさまざまな場面でうまく適応できず疎外されやすいため,児童期・思春期の支援体制の整備が不可欠です。
このような子どもたちとその家族を支援する重要な役割を担うのが,児童精神科医を中心として行われるこころの医療です。信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部は,平成14年4月に国立大学附属病院として初めて開設された,子どものこころの問題を専門とする診療部門です。平成26年4月からは部長が専任となり,より一層の診療体制の充実を図っているところです。病院内では,精神科,小児科,リハビリテーション部など他部門と緊密に連携しながら,こころの健康に問題を抱えた子どもと家族の支援を的確かつタイムリーに行うことを心がけています。また,関連機関と協力して,地域の子どもたちのこころの問題への支援に少しでも貢献できるよう努めています。
診療とともに期待される重要な使命として,研究と教育が挙げられます。研究では,学内外を問わず学際的な共同研究を行い,子どものこころの問題を多面的に研究しています。教育では,専門の児童精神科医の養成はもとより,地域医療の中で子どものこころの問題に対応できる精神科医および小児科医を養成するための研修プログラムを開発しています。また,臨床心理士,作業療法士などコメディカル・スタッフや学校教師向けの研修プログラムも行います。研修は臨床の技術と専門知識の両面をバランス良く習得できるよう,臨床現場での実習,カンファランス,講義,文献抄読などを通じて総合的に行います。 子どものこころの診療に関わる専門家は,まだまだ不足しています。少しでも多くの優秀な人材を養成できるよう,診療・研究・教育の充実を図っていきたいと思います。
診療部長 本田秀夫